2023年5月10日
松澤君、松尾君の研究成果を報告する論文が、Acta Biomaterialia誌に掲載されました。近年、3Dバイオプリンティングなど、細胞や人工材料をマイクロスケールで様々な形に加工する技術が発展し、組織や臓器を体外で作ろうという試みが盛んに行われています。ところが、細胞は自ら縮もうとする性質を持つため、マイクロ加工を施された立体面から自ら剥がれ、目的の形状を維持してくれない、という問題がしばしば起こります。なぜ細胞が立体面から剥がれてしまうのか?その力学的な仕組みはこれまでよく分かっていませんでした。松澤君と松尾君は、金沢大学の奥田覚先生との共同研究を通じて、細胞集団の振る舞いを記述する新しい粒子ベース力学モデルを開発し、実験で観察される細胞集団の形態を再現することに成功しました。そして、そのモデルをもとにシミュレーションを繰り返し、細胞が発する力が、細胞-足場間の接着破断を引き起こす力学的な機序を明らかにしました。今回開発した粒子ベースモデルを使うことで、様々な形状の足場の上で細胞集団が形成する組織の形を予測することができるようになり、将来、再生医療の道具設計に数理の面から貢献できると期待されます。

Ryosuke Matsuzawa, Akira Matsuo, Shuya Fukamachi, Sho Shimada, Midori Takeuchi, Takuya Nishina, Philip Kollmannsberger, Ryo Sudo, Satoru Okuda, Tadahiro Yamashita
"Multicellular dynamics on structured surfaces: Stress concentration is a key to controlling complex microtissue morphology on engineered scaffolds"
プレスリリース (2023/6/9)